クラブイベントのデファクトスタンダードになるか?AQUANAUTSの風景

もう先月の事になりますが、久しぶりにドラムンベースのイベントAQUANAUTS@Shibuya KinobarでDJをやらせて頂きました。ディープでアーバンな選曲を中心としたラウンジ感を重視したイベントで、リラックスした雰囲気でお酒と音楽、交流を楽しめるナイスパーティです。そこで興味深かった事をいくつか。

DJは今やUSBが基本!

現場ではもはや常識?最近のCD-JにはUSBメモリから楽曲をロード出来る機能が付いていて、その場でBPM検出はモチロン、高性能な機種になると波形表示までしてくれる!当日、僕の持ち込んだ機材の調子が悪くてプレイ中にノイズが乗りまくり。主催のMegsisさん(@DJ_Megsis)に、USBメモリでのバックアップを用意しましょう!と諭されてしまいました。申し訳ないm(_ _)m アナログレコードをキャリーカートに積んで街中をゴロゴロと移動してた頃に比べると、PCでDJをするようになってから大分荷物が減って楽になりましたが、それでもPCDJはセッティングが煩雑だし、トラブルがつきものという印象だったので、その内もっとシンプルなタブレットを主体にしたスタイルに移行しようカナ?と考えていたところ、現場はもっと先を行ってました。今やUSBメモリとヘッドフォンだけ持ってDJをしに行く時代。なんてカジュアル!当日はBistroさん(@Bistrojazz)や、AYAさん(@Aya_1206)がこのスタイルでしたね。

楽曲検索アプリShazamが人気?

当日DJをされたga_ck_ieさん(@ga_ck_ie)と遊びに来ていたたくまさん(@Tacumille)が、フロアでスマホをスピーカーに向けて何かしている。きいてみると、Shazamという楽曲検索アプリで今かかっている曲を調べているのだそう。スマホのマイクで拾った音声を元に検索しているという事は、楽曲の波形を照合する事で探してくれるのかな?ドラムンベースの楽曲はDL販売かアナログでの流通がほとんどなので、そういうものでも検索に引っ掛かるの?とたずねたところ、精度はかなり良好で、Beatportのような有名どころで販売されているものであれば、ほとんど引っ掛かるそう。街中でも、ふと耳にした楽曲が気になってしまう僕みたいな人種にはこれは便利!(もっと言えば、最近のヒット曲には欠かせない街鳴りとWeb鳴りを結びつける革新的なアプリかもしれない!)

イベントはソーシャルメディアのオフ会

一番印象的だったのは、出演者であるDJ、遊びに来るお客さんの殆どがTwitterなどのソーシャルメディアの繋がりで参加していた事。端的に言えばこのイベント自体が、ソーシャルメディアにおけるコミュニティをリアルに持ち出したものと言えそう。DJ同士、お客さん同士で直接的な繋がりが無くても、誰かのネットワークを経由して必ず繋がっているので、自己紹介はTwitterアカウント、Facebookアカウントの交換になり、比較的スムースに交流を持つ事が出来るし、また同時に参加者がスマホで、遂次イベントの様子や感想をSNSに書き込むので、現場にいないフォロワーさん達ともイベントを共有できる。これでUstreamでの中継が入ったりすれば完璧! 00年代半ばのまだSNSが流行りはじめの頃は、クラブでのSNS利用はあくまで補完的なものだったような気がします。初めてその場で会って、次にいつ会えるかわからないケド、どこかのイベントでまた会えた時に忘れないようにフォローしあう、名刺交換みたいなノリだったと思うのだけど、ここではそれが完全に逆転しているのが面白い。ソーシャルメディアで築いた繋がりをリアルで深めたり、間接的な繋がりを直接的なものにしたりと、交流を軸に据えたイベントだからこそ会話の邪魔にならない控えめな音量。そして、ドラムンベースという中音域が薄くて、声が通りやすいジャンルが驚くほど上手く機能していると感じました。 実際、他のクラブイベントに行くとメインフロアよりもラウンジの方が混んでいるというのはざらで、みんな音楽という共通の話題の上で、交流を楽しむという傾向が強くなってきているように思います。AQUANAUTSみたいなイベントが現れたのは時代の流れに沿った必然(Megsisさんのマーケティング能力の賜物!)で、これからより交流に軸足を置いた、ソーシャルメディアのオフ会としてのクラブイベントが増えてくるのかもしれませんね。

続・2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみた

2014年すっかり明けてますよ、おめでとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します!さて、昨年末にアップしました2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみたに続きまして、今回は対象となった139曲そのサウンド面に迫ってみたいと思います。前回の数値ベースの分析に比べると、サウンドに関しては数値では測れない部分がありますので、どうしても筆者の主観と偏見が入ってきてしまいます。なるべく客観性を保って分析を進めていきたいと思いますが、その点をあらかじめご了承下さいませm(_ _)m まずは、ジャンルから見ていきましょう。

注釈:ジャンルの分類には、様々な視点、方法論があり、この統計は筆者の知識と感覚に委ねる部分が多々あります。今回の分析の中でも一番曖昧な部分になりますので、ご参考までに留めて頂ければと思います。 特にロック、ポップ・ロック、ポップスの三つの項目に関しては、具体的な相違点が挙げにくく、使用音色やリズム、コード進行やミックス等から総合的に判断しています。具体例を挙げると、じんさんのロスタイムメモリーをロック、スズムさんの世界寿命と最後の一日をポップ・ロック、40mPの純情スカートをポップスと判断しました。この三項目に共通する要素としては生音系の音色を主体としたバンドサウンドであることです。 クラブミュージックの項目には、808系のキックを主体としたいわゆる四つ打ちや、ブレイクビーツ等のエレクトロニックビートを主体とするサウンドを分類しています。テクノ・ハウス・エレクトロ・ドラムンベース等がここに含まれます。:注釈ココマデ

 

かねがね言われている事ですが、やはりボカロック路線の人気は磐石。ロックに分類したものだけでも60本、ポップ・ロックまで含めれば81本と、全体の60パーセント越えという圧倒的な数字です。クラブミュージック系の楽曲も頑張っていますが、この中にハウスからドラムンベースまで、様々なビート、BPMのクラブサウンドを含んでいますので、決して多いとは言えないと感じます。また前回の分析でも少し触れましたが、バラード系の楽曲が思いのほか多くありました。これらの分類はBPM90前後でビートが際立たないもの、としていますが、アレンジの傾向としてはロックバラードからエレクトロニカ的な手法を含んだものまで様々です。 次に使用されている音色を見ていきましょう。まずは全ての楽曲で使用が確認できた、ベースとドラムスのサウンドから。

ベースはエレクトリックベース、ドラムスはアコースティックドラムが人気です。ベースは生演奏から、打ち込みによるピッキング、スラップ、フィンガーピッキングのシミュレートまで幅広く、特定の音源への偏りは無いように思いますが、ドラムに関してはレコーディングの難しさ、煩雑さからか、アコースティック・ドラムのシミュレート音源(Addictive DrumsやBFD、Superior Drummer等)と思われるサウンドが目立ちました。上の図を見ると、今回たまたまエレクトリックベースとアコースティックドラム、シンセベースとエレクトロニックビートの使用数が、それぞれ近い数字になっていますが、エレベにエレクトロビート、アコドラにシンベといった組み合わせもチラホラあり、Pの意向や曲調に応じて柔軟な組み合わせが試されています。(それでもエレベにアコドラの組み合わせが一番多いのが実状ですが) 続いて、非常に使用率の高かったギターの内訳が以下。

まず驚いたのがギターを全く使っていない楽曲は全体の10%、139曲中14曲のみだった事。そしてディスト―ションギターの使用率が、アコギ、クリーンとの併用まで含めると75%、139曲中105曲にも及ぶ事です。この105曲全ての楽曲がディスト―ションギター主体のサウンドという訳ではありませんが、(ジャズの中でバッキングに使われたり、クラブ系の曲で部分的に使われたりといった、裏方的な使われ方も多いです)ジャンルを越えて、これだけ高い割合でディスト―ションギターが採用されている事は、ボカロシーンの一つの特色と言えそうです。ギターは比較的、打ち込みでのシミュレーションが難しく、ご自身で実際に弾かれているPさんや、弾いてみたのプレイヤーとのコラボもチラホラ見受けられました。とは言え、そうそう身近に弾ける人がいるPさんばかりではないでしょうから、ELECTRI6ITYやREAL GUITAR 3といったギター専用音源も多々使用されているものと思われます。

 

対象となった139曲を聴いていて、他に耳に残った音色としては、まずピアノ。これは61曲での使用が確認出来ました。ジャズやポップス、バラード等のメイン伴奏としてだけでなく、ギター・ベース・ドラムのストレートなロックサウンドに、プラスワンとして、カウンターメロディやオブリガートを担当する場面も多々あり、ジャンルを越えて採用されている音色の一つです。 次いで、シンセのパルス波やサイン派、もしくはそれに近い音色を使った、チープでレトロないわゆるピコピコサウンドも数多く聴く事が出来、139曲中57曲で使われていました。これはカウンターメロディやオブリガートアルペジオ、ブレイク部分等で聴く事が出来ます。個人的には、この手の音がボーダーレスに様々なジャンルで使われていた事が、今回の分析で一番驚いた点でした。エレクトロ等ではお馴染の音色ですが、ロック等にも積極的に採用されいるのは、ボカロシーン独特のものではないでしょうか。

 

以上の事から①バンドサウンドが支持される傾向にあり、クラブサウンドの中にもそれらの要素を取り込んだものが見受けられる。(ギターの使用率が9割に上り、ディスト―ションギター・エレクトリックベース・アコースティックドラムといったバンドサウンドを特徴づける楽器が全体の75%の楽曲で使用されている。)②ピアノやピコピコサウンドは40%程の楽曲で使用されており、ギター・エレベ・アコドラに次ぐ人気。シンプルなバンドサウンドに、これらの音色を追加した編成も多くみられました。補足として、ピアノやピコピコ程の使用率はありませんが、イントロ部分、間奏などでシンセによるリードメロディ、サビ部等でバックグラウンドを埋めるストリングスやオルガンの音色、ブラスによるカウンターやオブリ等もよく聴かれました。

 

最後に、今回ご紹介してきた人気の音色(エレクトリックベース・アコースティックドラム・ディストーションギター・ピアノ・ピコピコ)全てが使われている、この楽曲をご紹介して締めさせていただきます。

BPM185、プレイタイム3:38のロックですね!この楽曲のように、イントロ部分のリードにシンセ、ギターの隙間をオルガンの音色で埋めるアプローチもチラホラあります。ドラムはアコースティックドラムを基調に、エレクトリックビートをアクセントとして使う併用スタイルです。 ここまでお付き合い頂き感謝!皆さんの制作の一助になれば幸いです。(・ω・)ノシ

2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみた

年の瀬らしく、2013年のボカロムーブメントがどんな傾向にあったのか、どんな曲が人気だったのか、今年投稿され一万マイリスを越えた人気楽曲139曲(2013/12/29時点、リメイク・リミックス・カバーは除外)を材料に分析してみました。ボカロPの皆様には制作のご参考に、リスナーの皆様は( ´_ゝ`) フーンと眺めていただければ幸いです。それでは早速、"VOCALOID"タグを"マイリスト数が多い順"でソートし、その中から2013年投稿楽曲を抽出したものが下の画像になります。これを元に、①使用されているボカロ ②プレイタイム(動画の尺) ③BPM(テンポ) ④動画の有無を見ていきましょう。

ということで、①使用されているボカロをまとめたものがコチラ!やはりミクさん、次いでGUMIさんが圧倒的人気です。IAさんも頑張っていますが15曲中7曲がじんさんの曲という事で、じんさん効果が大きそう。リンレンは二人合わせると22曲になるので、単体ソフトとしての人気はIAさんより上と言えそうです。(ボカロ4名以上の楽曲は、個別の人気、という視点からはやや外れるものと考え、除外しています。ご了承ください。)

次に②プレイタイム(縦軸が楽曲数、横軸が10秒毎にまとめたプレイタイム)ですが、3:20~4:30台に集中し、3:30~3:40台が特に多くなっています。リスナーの集中力がもつのは3分半、というのは音楽業界では実は有名な話でして、それ位の尺がポップスでは理想とされています。売れっ子ボカロPさん達も、3分半前後のプレイタイムを意識して制作されている方が多く、またリスナーさんにも支持されている、という事ではないでしょうか。(プレイタイムが1:36と極端に短いさつきがてんこもりさんの【ミク&レン】とんとんまーえ!【オネショタ】は例外として除外しています。)

続いてBPM(テンポ)の分布図が以下です。(縦軸が楽曲数、横軸が10毎にまとめたBPMTap BPMを使ってタップテンポで測っているので多少誤差があると思います)120~140と170~190に山があり、特に180台が多くなっています。少々、僕自身の主観が入ってしまいますが、これは16ビートの楽曲が120~140台に集中し、8ビートの楽曲が170~190台に集中したためだと考えます。それぞれのビートにおいて、ボカロ曲は全般にテンポが速い傾向にあると感じました。また意外だったのは80~90台という低速域に小さな山があります。これはバラード的な曲が作っている山で、アップテンポな曲ばかりではなく、ゆったりと聴かせる楽曲も根強い人気があると感じました。

さて④動画の有無ですが、これは○アニメーションやそれに近いもの、△一枚絵をカメラワーク等で見せるもの、×静止画のみ、で分けてみました。結果は139曲中○111曲△9曲×19曲となっており、やはり人気曲にはアニメーションが欠かせないものになってきているようです。DECO*27さんや40mPのような有名ボカロPにも静止画的な楽曲があったのはちょっと意外でしたが。


と、ここまでやってきて、ふと「ボカロにおける音圧戦争」の事を思い出したので、ついでに調べてみました。昨今のボカロの人気楽曲は特に音圧が高く、音圧無くして再生数、マイリス数が伸びる事はない!という例の噂です。⑤音圧(RMS値)について139曲全てを調べるのは骨が折れるので、その中からランダムで選んだ10曲をサンプルとして調べてみました。以下一覧

如何でしょうか?流石に1万マイリス越えの有名曲の中から選んだだけあって、ランダムでも錚々たる顔ぶれが並びます。音圧に関しては、確かに全般に高い数値ではありますが、今現在のJ-popと比較してもボカロ曲ばかりが飛び抜けて高いという訳ではないようです。最近では性能の良いマキシマイザーが安く手に入るようになってきていますし、RMS値で-7dB前後は決して不可能ではない数値だと思います。音圧という点に関しては、有名Pに並ぶ事は難しくはないゾ~! ここまで、お付き合い頂きありがとうございますm(_ _)m次回は年明けに、より実践的なジャンルやサウンド面に言及してみたいと思います。お楽しみに!それでは皆さん、よいお年を(・ω・)ノシ