続・2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみた

2014年すっかり明けてますよ、おめでとうございました。本年もどうぞよろしくお願い致します!さて、昨年末にアップしました2013年投稿のボカロ曲の中から一万マイリス越えの楽曲を分析してみたに続きまして、今回は対象となった139曲そのサウンド面に迫ってみたいと思います。前回の数値ベースの分析に比べると、サウンドに関しては数値では測れない部分がありますので、どうしても筆者の主観と偏見が入ってきてしまいます。なるべく客観性を保って分析を進めていきたいと思いますが、その点をあらかじめご了承下さいませm(_ _)m まずは、ジャンルから見ていきましょう。

注釈:ジャンルの分類には、様々な視点、方法論があり、この統計は筆者の知識と感覚に委ねる部分が多々あります。今回の分析の中でも一番曖昧な部分になりますので、ご参考までに留めて頂ければと思います。 特にロック、ポップ・ロック、ポップスの三つの項目に関しては、具体的な相違点が挙げにくく、使用音色やリズム、コード進行やミックス等から総合的に判断しています。具体例を挙げると、じんさんのロスタイムメモリーをロック、スズムさんの世界寿命と最後の一日をポップ・ロック、40mPの純情スカートをポップスと判断しました。この三項目に共通する要素としては生音系の音色を主体としたバンドサウンドであることです。 クラブミュージックの項目には、808系のキックを主体としたいわゆる四つ打ちや、ブレイクビーツ等のエレクトロニックビートを主体とするサウンドを分類しています。テクノ・ハウス・エレクトロ・ドラムンベース等がここに含まれます。:注釈ココマデ

 

かねがね言われている事ですが、やはりボカロック路線の人気は磐石。ロックに分類したものだけでも60本、ポップ・ロックまで含めれば81本と、全体の60パーセント越えという圧倒的な数字です。クラブミュージック系の楽曲も頑張っていますが、この中にハウスからドラムンベースまで、様々なビート、BPMのクラブサウンドを含んでいますので、決して多いとは言えないと感じます。また前回の分析でも少し触れましたが、バラード系の楽曲が思いのほか多くありました。これらの分類はBPM90前後でビートが際立たないもの、としていますが、アレンジの傾向としてはロックバラードからエレクトロニカ的な手法を含んだものまで様々です。 次に使用されている音色を見ていきましょう。まずは全ての楽曲で使用が確認できた、ベースとドラムスのサウンドから。

ベースはエレクトリックベース、ドラムスはアコースティックドラムが人気です。ベースは生演奏から、打ち込みによるピッキング、スラップ、フィンガーピッキングのシミュレートまで幅広く、特定の音源への偏りは無いように思いますが、ドラムに関してはレコーディングの難しさ、煩雑さからか、アコースティック・ドラムのシミュレート音源(Addictive DrumsやBFD、Superior Drummer等)と思われるサウンドが目立ちました。上の図を見ると、今回たまたまエレクトリックベースとアコースティックドラム、シンセベースとエレクトロニックビートの使用数が、それぞれ近い数字になっていますが、エレベにエレクトロビート、アコドラにシンベといった組み合わせもチラホラあり、Pの意向や曲調に応じて柔軟な組み合わせが試されています。(それでもエレベにアコドラの組み合わせが一番多いのが実状ですが) 続いて、非常に使用率の高かったギターの内訳が以下。

まず驚いたのがギターを全く使っていない楽曲は全体の10%、139曲中14曲のみだった事。そしてディスト―ションギターの使用率が、アコギ、クリーンとの併用まで含めると75%、139曲中105曲にも及ぶ事です。この105曲全ての楽曲がディスト―ションギター主体のサウンドという訳ではありませんが、(ジャズの中でバッキングに使われたり、クラブ系の曲で部分的に使われたりといった、裏方的な使われ方も多いです)ジャンルを越えて、これだけ高い割合でディスト―ションギターが採用されている事は、ボカロシーンの一つの特色と言えそうです。ギターは比較的、打ち込みでのシミュレーションが難しく、ご自身で実際に弾かれているPさんや、弾いてみたのプレイヤーとのコラボもチラホラ見受けられました。とは言え、そうそう身近に弾ける人がいるPさんばかりではないでしょうから、ELECTRI6ITYやREAL GUITAR 3といったギター専用音源も多々使用されているものと思われます。

 

対象となった139曲を聴いていて、他に耳に残った音色としては、まずピアノ。これは61曲での使用が確認出来ました。ジャズやポップス、バラード等のメイン伴奏としてだけでなく、ギター・ベース・ドラムのストレートなロックサウンドに、プラスワンとして、カウンターメロディやオブリガートを担当する場面も多々あり、ジャンルを越えて採用されている音色の一つです。 次いで、シンセのパルス波やサイン派、もしくはそれに近い音色を使った、チープでレトロないわゆるピコピコサウンドも数多く聴く事が出来、139曲中57曲で使われていました。これはカウンターメロディやオブリガートアルペジオ、ブレイク部分等で聴く事が出来ます。個人的には、この手の音がボーダーレスに様々なジャンルで使われていた事が、今回の分析で一番驚いた点でした。エレクトロ等ではお馴染の音色ですが、ロック等にも積極的に採用されいるのは、ボカロシーン独特のものではないでしょうか。

 

以上の事から①バンドサウンドが支持される傾向にあり、クラブサウンドの中にもそれらの要素を取り込んだものが見受けられる。(ギターの使用率が9割に上り、ディスト―ションギター・エレクトリックベース・アコースティックドラムといったバンドサウンドを特徴づける楽器が全体の75%の楽曲で使用されている。)②ピアノやピコピコサウンドは40%程の楽曲で使用されており、ギター・エレベ・アコドラに次ぐ人気。シンプルなバンドサウンドに、これらの音色を追加した編成も多くみられました。補足として、ピアノやピコピコ程の使用率はありませんが、イントロ部分、間奏などでシンセによるリードメロディ、サビ部等でバックグラウンドを埋めるストリングスやオルガンの音色、ブラスによるカウンターやオブリ等もよく聴かれました。

 

最後に、今回ご紹介してきた人気の音色(エレクトリックベース・アコースティックドラム・ディストーションギター・ピアノ・ピコピコ)全てが使われている、この楽曲をご紹介して締めさせていただきます。

BPM185、プレイタイム3:38のロックですね!この楽曲のように、イントロ部分のリードにシンセ、ギターの隙間をオルガンの音色で埋めるアプローチもチラホラあります。ドラムはアコースティックドラムを基調に、エレクトリックビートをアクセントとして使う併用スタイルです。 ここまでお付き合い頂き感謝!皆さんの制作の一助になれば幸いです。(・ω・)ノシ