ポスト・ダブステップ?ポスト・チルウェイブ?アンビエントR&B?FKA Twigsから辿るインディR&Bの系譜

最近、各所で話題になっているFKA Twigs『LP1』ですが、自分も例にもれず買ってみました。なるほど、これは確かに!皆が注目するのもわかる独特のサウンドスケープ。抽象的でダウナーな、ともすれば理解され難いトラックに、キャッチーなメロディが乗って、不可思議なのに聴きやすい絶妙なバランス。

LP1

LP1

 

 

調べてみるとこのFKA Twigs、メディアではその扱いに困っているようで、ポスト・ダブステップだとか、ポスト・チルウェイブであるとか、いやこれはアンビエントR&Bだとか、それらを全部ひっくるめてインディR&Bなんて呼ばれ方で紹介されていたりするようです。一聴してわかるとおり、その奇抜なサウンドに美麗な歌声が乗る所から、「新世代のBjork」なんて言われ方もされてるみたい。いずれにせよメディアがカテゴライズに困っている時は、何か新しい潮流が生まれつつある証拠!ということで、今回はこのミステリアスな歌姫を中心に、にわかに活気づくインディR&B(暫定的にこう呼んでおきます)の世界を覗いてみます。

 

まず、FKA Twigsを世に送り出したのが、2006年にXL Recordings傘下に設立されたレーベルYoung Turks。所属アーティストを見てみるとSBTRKTやSampha、The xx等々、その錚々たる顔ぶれにまず驚かされます。と同時に、この諸先輩方あっての彼女、という所で妙に納得してしまう部分も。SBTRKTもThe xxも、独特のアンビエンス感のある個性的なサウンドを展開しながら、その中心に歌を置くというスタイルは、FKA Twigsに通ずる所があると思いませんか?

ポスト・ダブステップという視点から見れば、まずまっ先に浮かんでくるのがJames Blake。1stアルバムで聴かせてくれた、ブリストルマナーのダブステップに儚げな歌が乗るというスタイルが2011年当時、話題になりましたね。昨年リリースされた『Overglown』は2013年英マーキュリープライズを獲得。しかしながら、1stのようなダブステップ・アルバムを期待していた自分には少々物足りなく感じられ、暫くCDラックで埃を被っていました。今回、この記事を書くにあたって聴き直してみれば、なるほど、このサウンドの変化はインディR&Bの流れを意識したものだったのか!と、ようやく納得がいきました。

 ダブステップ・ミーツ・R&Bという点でいったら、この人Jamie Woon。James Blakeがダブステップに歌を乗せたのだとしたら、Jamie Woonは自身のサウンドにダブステップの質感を取り入れていった人と言えます。ダブステップの大御所Burialから多大なる影響を受け、アルバムでもリードトラックのプロデュースを任せるほど。直球なダブステップトラックこそないものの、そのサウンドはダブステップからの影響を色濃く感じさせます。

 ポスト・チルウェイブの代表格と言われているのがHow To Dress Wellですね。個人的にこの人はチルウェイブというよりは、ウィッチ・ハウスの人*1という印象でして、ウィッチ・ハウスというジャンル自体がアンダーグラウンドな指向を見せていたので、まさかここまで有名になろうとは思ってもいませんでした。それというのもやはり、浮遊感のあるトラックに、歌を前面に打ち出したサウンドが時代の流れにマッチしたからこそなのでしょう。

How To Dress Wellを世に送り出したのが、ウィッチ・ハウスの総本山TriAngleレーベルのオーナーであるBalam Acab氏。自身もウィッチ・ハウスを代表するアーティストとして名を馳せています。今回挙げた他のアーティストに比べると、歌こそ前面には出てこないものの、その神秘的なサウンドはFKA Twigsに通じる所があると思います。

そして話は、いよいよアンビエントR&Bにまで及ぶワケですが、申し訳ない。僕自身がほとんどこのジャンルを聴いてこなかった為に、あまり紹介するネタがありません。聞き及んでいる話によれば、昨年グラミーを受賞したFrank Oceanが代表的なアーティストだとか…。ここは各自で調べておくように!(笑

といったように、多方面からのクロスオーバーがあり百花繚乱なこのシーン。水面下ではまだまだ次なるアーティスト、次なる作品が待機しているようですので、しばらく注目していきたいと思います!

*1:ウィッチ・ハウス自体がポスト・チルウェイブ、ポスト・ダブステップという触れ込みで出てきました。