市販プリセットで楽々!ニューロファンク・ベースの作り方

 今回は、先日アップしました拙作『Mars Attacks!』を題材に、ベースの作り方について解説してみます。ドラムンベースの中でもニューロファンクは、特にベースサウンドの比重が大きいジャンルですが、それだけに作るのが難しいですよね。 かくいう自分もこの難題に過去、幾度となく挑み挫折してきました。簡単にできて、オリジナリティがあって、なおかつ汎用性のある制作方法はないものか…。そんな考えを巡らせながら本作を進めていたところ、ちょっとした発見があったので書かせていただこうと思います。

 

ちょっと話が横道にそれますが、先日、Spliceでサンプリング素材を探していたところ、ニューロファンク・プロデューサーDocument Oneのプリセット集を見つけました。その名も『Document One Technique Essential』。下のデモをご覧いただくとわかる通り、シーンを牽引する現役プロデューサーだけあってベースもすごくカッコイイ!

 

これは良いとばかりに、さっそくフルセットを購入し、意気揚々とトラックメイクをはじめるも、思いのほか使いづらい…!パラメーターのいたるところにモジュレーションがかかっていて、お目当てのベース・プリセットもまるで効果音のようです。これらをMIDIとオートメーションを駆使してコントロールすることもできますが、それには音色を分析し、どのパラメーターがどのように働いているのか、深く理解していないといけません。作り込まれた音色であればあるほど自在に使いこなすのは難しいですよね。買ったはいいけど、結局使わずじまいになってしまった…なんてこと、誰しもあるんじゃないでしょうか?

 

このプリセット集もまたハードディスクの片隅にひっそりと埋もれていくのか…。そんな暗澹たる気持ちになりはじめた頃、ふとひとつの考えが頭をよぎりました。「これだけカッコイイ音色なら、カッコイイ部分だけ繋ぎあわせれば、カッコイイベースになるんじゃない…?」我ながら安直ですが、そうして出来上がったのが拙作『Mars Attacks!』のベースラインです。

 

閑話休題。今回、みなさんにご紹介したい方法がまさにこれです。格好良いプリセット音色をオーディオ化して、カットアップクロスフェードでオリジナルフレーズを組み立ててしまおう!というもの。モジュレーションがあらかじめ織り込まれているプリセットであれば、オートメーションはほとんどいりません。騙されたと思ってやってみてください。それでは、実際の作業手順を見てみましょう。

 

①まずはシンセザイザーを立ち上げ、好きな音色のプリセットを選びます。これをベタ打ちのMIDIで鳴らし、Cubaseの「編集  > インプレイスレンダリング 」でオーディオファイルに書き出します。下の画像ではSerumを3機、『Document One Technique Essential』から三種類のプリセット音色を書き出しました。*1 これだけ聴くと、いかにもありそうな、ありふれたベース音色だと思いませんか。

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②次に、これらのオーディオファイルの使いたい部分をカットし、フレーズになるよう並べ替え、クロスフェードでつなぎます。下記が実際に編集した後のベースパート。これだけで、あたかもシンセ・パラメーターが目まぐるしく変化しているかのようなベース・サウンドを、手軽に作ることができます。

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③最後に、このトラックに適用するプラグインです。下の画像をご覧いただくとわかるとおり、多段階でサチュレーターや歪み系などの倍音付加エフェクトを使っています。これにより、もとは別々の音色であったベースラインに統一感が出ます。注意していただきたいのは、歪み系エフェクトは低音を弱めてしまうこと。ベースラインなので、あくまで質感の統一を目的として控えめにしてください。最終段近くにベースエンハンサーを挿すのも良いと思います。

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いかがでしたでしょうか。今作ではベタ打ちのMIDIをオーディオ化していますが、さらに音程変化やオートメーションを併用することで、より緻密なベースラインを構築することも可能です。是非、お手持ちのシンセ・プリセットでお試しください!本記事が、みなさんのトラックメイクの一助になれば幸いですm(_ _)m

*1:実際はここで音色を選別しています。六種類くらい書き出してみて、使わなかったものは消しています。