Suchmosはおじさんしか聴いていない?それでもいいじゃないか。

数日前からSNS上で、こちらの記事が話題になっています。昨年9月から放送されているホンダVEZELのCMに起用され「ブレイクした」とされる日本のバンドSuchmosを揶揄する内容です。この記事によれば、SuchmosはJamiroquaiっぽい懐古的なサウンドで、若者はその存在を知らないし、おじさんたちしか聴いていないとのこと。

ホンダVEZELのCMに使われているSuchmos - STAY TUNE

 

ちょっとだけ話が逸れますが、筆者は10代の頃から洋楽を主に聴いてきた、大の洋楽党です。洋楽を過大評価する傾向にある洋楽コンプレックスも自覚しています。邦楽、J-ポップはその時々で話題になっているものや、ラジオで聴いて気になったものをレンタルショップでチェックするくらい。そんな筆者が、久しぶりに「この日本のバンド、イイな!」と思わされたのがSuchmosでした。

 

言われてみれば筆者も三十代半ばであり、Jamiroquaiをはじめとしたアシッドジャズ・ムーブメントに夢中になった世代です。彼らのファーストアルバム『THE BAY』を聴いたとき、その懐かしいサウンドに思わずニヤリとしてしまったのもまた事実。これらのことを踏まえてみれば、なるほど、先の記事で指摘されていることは、あながち間違いではないかもしれません。

 

しかし、Suchmosが本当にブレイクしているかどうか、若者に人気かどうかは、正直どうでもいいのです。彼らの支持層が30代40代のおじさんであっても良いではありませんか。むしろ、長らく音楽消費の主体とされてきた10代以外のリスナーを、彼らが新たに開拓したのであれば、それはマーケティングとして成功したと言えます。

 

Suchmosを追いかけていて気づいたのですが、今、日本ではアシッドジャズの影響を感じさせるバンドが数多く出てきています。アシッドジャズというキーワードを持ち出すと、日本では必ず「渋谷系」に行きつきますが、昨今の活況は、当時の渋谷系以上と言えるかもしれません。若いころ渋谷系にハマった人も、この手のサウンドが好きな人も、この状況を楽しまないともったいない!今回はそんな方々に向けて、Suchmosに連なるバンドを紹介してみようと思います。

 

Suchmosと並ぶオシャレバンドの代名詞cero。Suchmosより控えめなBPMの楽曲が多く、高城晶平さんのラップ的な歌唱も相まって、ヒップホップの影響を色濃く感じさせます。Robert Glasperをはじめとする「今ジャズ」とのリンクを匂わせる楽曲もチラホラ。

 

今ジャズの話が出たところでWONKも紹介しておきましょう。今回取り上げる中では、Robert Glasperに最も近いサウンドで、L.Aビート・シーンとのリンクも感じさせます。彼らに関してはアシッドジャズというより、今ジャズのバンドといった方がしっくりくるかもしれません。

 

シンガーソングライターJQを中心とした覆面バンド(実際はJQ以外のメンバーが固定していないだけのようですが)。Suchmosが和製Jamiroquaiならば、さしずめNulbrichは和製Maroon 5といったところでしょうか。このリードトラックはMaroon 5 - Sunday Morningを彷彿とさせますね。

 

今回、紹介する中では一番ポップでキャッチーなLUCKY TAPES。アシッドジャズ色はやや薄めですが、その分、バラエティに富んだ楽曲が楽しめます。渋谷系の中でピチカート・ファイヴ小沢健二さんが好きだった方には、このバンドが一番入りやすいかもしれません。

 

筆者はボカロ界隈でも活動しているので、ボカロPの中からも一人ご紹介させてください。ボカロPいちのアシッドジャズの名手、りょう@シャレオツPさん。Jamiroquaiへのリスペクトを公言されていて、楽曲の至る所にそのオマージュが見て取れます。

 

いかがだったでしょうか。繰り返しになりますが、J-ポップにおいて今のような和製アシッドジャズの隆盛は、そうあることではないと思います。この手のサウンドがお好きな方には、是非ともこの機会を逃さず、リアルタイムで聴いていただきたい。そして、音楽メディアの方には、この活況をムーブメントと呼べるところまで育てていただきたいです。「アシッドジャズ」「渋谷系」に替わる、新たなワードの登場を期待しています!