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円盤P『予感リップス』にみるポリリズムを駆使したリズムトリック。垣間見えるJuke/Footworkからの影響

筆者は円盤Pこと鈴鳴家さんのファンです。円盤Pはジャズやファンク等のブラックミュージックに、現代的な手法を取り入れた作風を特徴とする知る人ぞ知るボカロP。寡作ではありますがアップされるどの楽曲も個性的で面白い!今回はつい先日アップされた新曲『予感リップス』をご紹介したいと思います。

 

それでは、早速聴いて下さい!と行きたいところなのですが、こちらの曲、果たしてあなたには何拍子に聞えるでしょう?是非、ご自身で「ワン・ツー・スリー…」とカウントを取りながら聴いてみて下さい。

最初に出てくるタムのフレーズや、Aメロ冒頭(歌が入ってくる部分)のキックのリズムからはBPM120の3/4拍子が感じられると思います。下のファイルでは3/4拍子の頭拍にキックを入れてみましたが、こんな風にリズムをとって聴かれた方が多いのではないでしょうか?

ですが、1:03からのCメロ(「今までにない~」の部分)では、BPM120・3/4拍子で鳴っているキックが浮いてしまっていますね。この部分だけはBPM160の4/4拍子とした方がしっくりきます。もちろん楽曲中でテンポや拍子が変わることはそれほど珍しいことではありませんし、そう捉えても間違いではありません。しかし、この楽曲の面白さは「全体を通してBPM160の4/4拍子としても捉えることが出来る」点にあると筆者は考えます。今度は試しにBPM160・4/4拍子でキックを入れてみましょう。

いかがでしょう?BPM160・4/4拍子のキックを入れても十分に成立しますし、それによって聴こえ方が大分変わったのではないでしょうか。実はこの楽曲、リスナーが複数のテンポを自由に行き来しながら聴けるようにデザインされているのです。ちょうど先月ネットで話題になった「白・金ドレス or 青・黒ドレス」のように、捉え方によって見え方が変わる錯視的な作りになっているのですね。

このBPM160とBPM120といった異なるリズムを同居させる手法(ポリ・リズムと言います)は、最近盛り上がりを見せているJuke/Footworkというジャンルの根幹となる要素でもあります。「ジュークなフットでワークしてるの。」という歌詞から見ても、このリズムトリックがこのジャンルを意識した、意図的なものである事は間違いないでしょう。

 

ひとつ違うのは、Juke/Footwork楽曲の多くがBPM160/80・4/4拍子が表に出ているのに対し、円盤Pのこの楽曲はBPM120・3/4拍子が強く主張している点です。単純にビートを取り入れるのではなく、ひとひねり加えたところに独創性が感じられますよね。何よりこのトリッキーなリズムをポップスとして成立させてしまうその手腕には脱帽です!

 

余談ではありますが、前作『マイアイポッド』の歌詞にJuke/Footworkの代表的なプロデューサーであるDJ RashadやRP Booが登場する事から見ても、円盤Pは最近このジャンルに傾倒しているようですね。ここまで、お付き合いいただき感謝m(_ _)m